快傑スカット第1話『さすらいはエロ本の後に』
幼稚園児数名をつれてちょっとした近隣のハイキングに出かけてきている、若い女性の幼稚園の先生数名。
『憂先生、今日は何して遊ぶの?』
『今日はどうしようかしらね』
園児の明るい超えに答えるのは年若い女性の先生で名前は平沢憂。
とても明るく面倒見がいいので、園児の父母も安心して信用しているお姉さん的な先生。
園児にも大人気だ。
キキーーッ
そんな、ひと時を吹っ飛ばすような甲高い音。
『憂先生、なんか車がこっちに向ってくるよ』
『先生から離れちゃダメよ』
直感で危険を察知したのか、憂は園児を自分の周りに寄せる。
そんな憂の前で車は停止した。
中からは黒い服に身を包んだ屈強な男が3人ほど降りてきた。
さらに、車に降りずに窓から顔を出すものがひとり。
『地獄の澪!!』
憂はとっさに叫ぶ。
この近所で彼女のことを知らないものはいない。
このあたりを牛耳るやくざ組織『地獄同盟』の長がこの"地獄の澪"である。
『お嬢さん、私の部下があなたたちをもっと可愛がってあげましょう。やれ』
地獄の澪の一言で降りてきた男たちが園児のほうに歩いていく。
その手になにか怪しいものを持って・・・
しかし、地獄の澪はその後のことはお構いナシと言った感じで、そのまま部下の運転する車で走り去った。
−−−−−−
『や、辞めてください!!』
憂は3人のうちの一人に羽交い絞めにされている。
憂と男の体格差は誰が見ても明らかで、とても憂がどうにかできる様な相手ではない。
それが3人もいては、憂にはどうしようも出来ない。
『子供たちに手は出さないで』
『お前は黙ってみていろ!!』
他の2人の男が、園児を追い掛け回している。
園児はなすすべなく、男に捕まりエロエロしい本を見せられている。
園児の悲鳴が憂を2重に苦しめる。
『お、お願いやめてください・・・』
既に憂に反抗する気力も体力もなく、園児がいたぶられているのを黙ってみているしかなかった。
『い、いててて〜〜〜〜』
突然ひとりの男が叫んだ。
よく見ると、何者かに耳を引っ張られている。
『だ、誰だお前は!!』
『平沢唯・・・といっても知らないだろうけどね』
唯と名乗った彼女は誰が見ても『今から山登りに行ま〜〜す』的な格好をしている。
そして、男の耳を引っ張りながら男を園児から引き剥がし、そのまま投げ飛ばした。
『ギターと放課後が大好きな、貧乏学者よ』
男たちは突然の加勢にたじろいだ。
先ほどの投げられた男をみただけで、この平沢唯の戦闘能力を見抜いたのだ。
しかし、そんな暇もあっという間に消えた。
唯はすかさず男たちに追加攻撃をする。
ケリとパンチが飛び交うが、男たちの攻撃はかするばかりで、唯の攻撃だけが男たちに炸裂。
ボディブローに顔面パンチの連続。
3対1でも、男たちがへばるまで1分とかからなかった。
『ふう、こんなところかな』
『お姉ちゃん!!』
『うい〜〜〜、無事かニャ?』
『うん、私は大丈夫。お姉ちゃん久しぶりね』
憂が思わず叫んだ。
この二人は姉妹だったようだ。
まさかの形で久しぶりの再会。
ばきゅ〜〜ん
そこに銃声が響いた。
唯にむかって弾が発射され、その弾が唯のかぶっていた山登り用帽子だけを吹っ飛ばした。
『ははは、お前さんなかなかやるねぇ〜〜〜』
『マカローニ・ムギ!!』
憂が叫ぶと同時に、カチャカチャっと昔の西部劇で穿くようなブーツで音を鳴らしながら歩いてきた一人の女。
格好はどう見ても時代錯誤な、アメリカのマカロニウェスタン風。
そして腰に二丁拳銃を入れたホルスターをぶら下げている。
完全に銃刀法違反でアウトの格好。それ以上にセンスもダサいww
そして唯の前でいきなり2丁の拳銃を抜き、発砲。
パンパンパン・・・・・・・
6発の弾が2丁拳銃から発射されたので、都合12発の弾丸が唯にむけられた。
しかしそれはひとつも当たっていない。
顔の顔には弾がかすった後、服には擦れたあとだけがあった。
『はーーはっは、当てるつもりはなかったのですが、動けば当たるくらいのギリギリを狙いました。しかし動かずそれを受け流すとは、なかなか見上げた度胸ですよ』
『お褒めに預かり光栄です。』
両手を挙げて『ヒュー』と言いながら、マカローニムギが唯の度胸に感心した様子だった。
唯も皮肉を込めて礼を言う。
『じゃあ、今度は心臓を狙わせてもらいますね。』
マカローニ・ムギの銃口が唯の心臓に合わされた。
しかし唯は動じない。
それは"やれるものならやってみろ!"という堂々とした構えだった。
そして1発の銃声が響いた!!
憂は右手をかばうマカローニ・ムギの姿を確認。
そばに拳大くらいの石がころがっていた。
どうやら誰かがこの石を投げ、それがマカローニ・ムギの右手にあたり弾道がそれたので、唯には当たらなかったようだ。
『だれですか!!出てきなさい!!』
突然石を投げられたことに憤慨したマカローニ・ムギは、石を投げた者をさがした。
そして、約30mほどの高さがある断崖絶壁の上にいる人物を発見。
こちらもありえない黒いパンタロンのズボンとカウボーイハットをかぶっている。
さらにはギターを持ち、片足を岩の上に乗せて、がけの上から見下ろしていた。
『あなたですか、私の邪魔をしたのは?!。私が誰か知ってのことですか。答え次第では容赦しませんよ』
マカローニ・ムギに質問されて、その者は答えた。
『地獄同盟の長"地獄の澪"の用心棒、マカローニ・ムギ。眉毛流2丁拳銃の使い手で、日本で2番目の正確射撃と早撃ちの名手。』
『日本で2番目?じゃあ日本一は誰なの?』
その者はいきなり親指を立てて、その親指を自分にさした。
その行為はすなわち『日本一は自分だ』という意味になる。
『あなた面白いわね。私、あなたと勝負してみたくなったわ。』
そういってマカローニ・ムギは2丁のうち1丁を謎の人物に渡した。
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そこには唯が頭に花冠をつけて直立不動で立っている。
『あなたがあの女の頭部右側の黄色い花、私が左側の赤い花を狙う。どちらが多く花びらを落としたかで決める』
『お、お姉ちゃん・・・』
『大丈夫です。あなたのお姉さんは私が守りますから』
『言っておくけど、さっきあなたが私にぶつけた石のせいで、正確な射撃が狂うなんてことがあるかもね。』
『それは、それは、ご丁寧に忠告ありがとうございます』
二人は銃を構えた。
そして一斉に6発ずつ弾を発射する。
さすがに憂もこれは祈るしかない・・・目を瞑って祈りを続けてひたすら銃声が鳴るのが終わるのを待った。
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銃声が鳴り終わったが、唯の頭には全く花びらが落ちていない花冠が残っていた。
唯もなんともない。
つまりは二人の弾は唯にかすりもしなかったという事になる。
その光景にマカローニ・ムギは驚愕した。
『こ、これはどういうことですの!!』
『さあて、どういうことでしょうね』
『でも、あなたの花びらも落ちていないわ!!勝負は引き分けね』
『おっと、それはどうでしょう?』
『あ、あったわ。お姉ちゃんの言うとおりだった』
憂が弾の飛んでいった方角から何かを拾ってきた。
それは二人が打った銃の弾だったが、一方は半分欠けていて、一方は無事だった。
それを見た瞬間マカローニ・ムギまた驚愕した
(こ、この人まさか、私が撃った弾を自分の弾で叩き落したと言うの?!なんてとんでもない業を・・・)
この瞬間に勝負は決まった。
謎の人物の圧勝である。
『マカローニさん、お帰りはあちらへどうぞ。』
『今日のところは見逃してあげるわ。撤収するわよ』
マカローニ・ムギは、唯の攻撃でへばった部下を引き連れ退散した。
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